齋藤力

DORSO STOCK COLLECTIONの"PECORA NERA"でDORSOのMTMシングルチェスターフィールドコートを仕立てる

PROCESS OF ORDERING
お客様から頂戴したオーダーアイテムの素材選びから仕上がりまでの過程について、"PECORA NERA"でオーダーを頂戴したヘリンボーンのシングルチェスターフィールドコート(チェスターコート)を一例にご説明をさせていただきます。
DORSOでMTMのコートをオーダーいただいた場合のご注文からご納品までの流れ、お客様からのご要望やこだわり、私自身が洋服作りに対して大切にしていることについて触れていきます。

生地選び

今回ご紹介するコートの記事は、DORSOでスーツやジャケットを仕立てさせていただいているリピーターのお客様からいただいたシングルチェスターフィールドコートのオーダーについてです。

こちらのお客様とはスーツやジャケットのオーダー時・ご納品の度にお会いしており、コートについても過去に何度か会話に出ていたこともあり、今年6月8日(土)~7月28日(日)に開催しておりましたDORSOコート オーダーフェア2024でコートについて再度お話をさせていただき、今回のオーダーを頂戴致しました。

DORSOコート オーダーフェアでは、DORSOが自信を持ってお薦めしておりますコートの仮縫いをサービスでお薦めしておりますので今回のコートは仮縫い有りの仕立てで進めさせていただきました。
(DORSOでの初回オーダー仮縫いサービスとは別で、オーダーフェア期間はコート仮縫いサービスを実施しております。)

前述したようにこちらのお客様にはDORSOでスーツやジャケットをオーダーしていただいておりましたので、ジャケットのデータを基に今回のコートの設計をさせていただきました。
コートの設計の際に、ジャケットのデータがある場合はそのデータをベースにすることで仮縫いの精度を高めます。
(DORSOで初オーダーのお客様の場合は、ジャケットのデータは無い代わりに弊社サンプルか普段お召しのジャケットを基に設計をさせていただきます。)

生地は"DORSO STOCK COLLECTION"からLoro Piana(ロロ ピアーナ)のPECORA NERA(ペコラ ネラ)の太幅のヘリンボーンをお選びいただきました。

"DORSO STOCK COLLECTION"とは、DORSOが現物生地を仕入れて在庫しているコレクションとなります。
バンチコレクションにも素晴らしい生地が多い中で敢えてDORSOが生地をコレクションする基準は、
①ヴィンテージ生地の一点物
②廃盤生地で今後入手ができなくなる物
③珍しい品質の生地でバンチにそもそも含まれていない物
④現行バンチコレクションに含まれているが、敢えて現物で仕入れてご覧いただきたい品質の物
これら①~④の現物生地を厳選して仕入れることでお客様へのより良いご提案を目指しております。

今回お選びいただいたコート生地は、②廃盤生地で今後入手ができなくなる物の一つです。

私がこの生地と出会ったのは5年~6年ほど前になると思います、当時新作として登場し大人気のコレクションでした。

その後ペコラネラに使用されるウールの希少性の高さが原因で廃盤となってしまうのですが、偶然デッドストックのペコラネラと出会う機会があったので直ぐにDORSOのストックとして仕入れました。

ペコラネラの特徴は、羊毛を染色せず自然の羊毛の色の濃淡を使って糸を紡ぎ生地に織り上げております。無染色の羊毛の自然な色味は生地に独自の温もりと柔らかさを与え、ペコラネラでしか表現ができない魅力的な配色の色合いを備えます。

色味の美しさだけではなく、生地の滑らかさ、コート生地に求められるしっかりとした質感を備えており素晴らしい品質のコート用素材として今回お薦めをさせていただきました。

コートの仮縫い

コートの仮縫いをさせていただきながら、お客様にもコートの仮縫いの目的についてご説明をさせていただいた上でフィッティングチェックをさせていただきました。
ご体型の特徴については既に把握しておりましたのでフィッテイング面は私にお任せいただき、お客様のお好みについてご相談をする上で一番のチェックポイントはコートの長さ(着丈)をどれくらいに設定するかです。
チェスターフィールドコートの着丈は基本的に膝を基点として決めていくのですが、丈の微妙な違いで印象が変わるので実際の着用シーンやコーディネートについてのイメージを共有させていただき、どれぐらいの丈が今回のオーダーの最適解となるのかを模索していきます。

このコート生地の色味・柄を活かすために前のボタンを留めた際にボタンが見える"打ち抜き仕様"で今回は仕立てさせていただきます。

クラシックなスタイルの中に、ほんの少し軽快さを与えるディテールとして打ち抜き仕様を採用致しました。

コートの着丈のチェック。

完成とご納品

オーダーをいただいていたチェスターコートが完成致しました。

仕上がったコートを着用していただき、先ずはペコラネラの生地の質感、そして美しい自然な羊毛の色味を確認していただき、最終のフィッティングチェックをさせていただきました。

休日にご来店いただいたので、スーツやジャケットではなくインナーに"IOLO×DORSO"のモックネックをコーディネートさせていただきました。
ビジネスシーンではジャケットやスーツと合わせていただき、少しカジュアルな軽さが装いに欲しい時にはニットスタイルでコーディネートを楽しんでいただけるコートに仕上がりました。

今回のブログでは、リピーターのお客様のシングルチェスターフィールドコートをご紹介させていただきました。

DORSOで仕立てさせていただいたコートをお客様の生活の中で着ていただき、実際の動きに伴う着用感やバランス・仕様(裏地やポケット)・コーディネートについて感じられたことはできる限り共有させていただきたいと私は思っております。
初めてのオーダーのお客様もリピーターのお客様も同様に、お客様のワードローブやコーディネートに携わらせていただく中で1着1着のご納品を大切にしながら、ご納品後もご意見をお聞きすることでお客様の理想を形にするお手伝いを可能にし、私が取らせていただいたデータをアップデートし続けることでお客様の期待にお応えできると信じております。
お客様の期待を超える服作りを目指して、今後もDORSOは尽力致します。

齋藤力

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